「中世東北修験の聖人・慈覚大師」説


帰宅して、『図録』をみる。わたしの好きな円仁の「真像」といわれる立石寺のお顔(9年に及ぶ中国の求法と受難の旅など未知の空間と時間を確固たる意志と工夫で生き抜いた聖人の尊顔(デスマスク))を表紙にしている(2200円と豊富な図版を満載した内容の割にはお徳な値段)。前回の「熊野信仰と東北」の特別展図録で画期的な論文を発表した政次氏の仏像研究からみた東北の9〜12世紀宗教史の到達点が簡潔に述べられていた。
すなわち(12世紀の東北地方における天台宗の旺盛な活動において)「円仁は、(修験を中心としたあり方を示した)熊野信仰及び出羽三山信仰の効能の根拠として、実に、人々に幸福を確約する聖なる存在として認識されていた」と(「東北地方の人々のための慈覚大師円仁(素描)」)。
確かに円仁には金峰山等で修行し、比叡山千日回峰を始めたとされる相応(831〜918年)などの弟子がいる。しかしその後200年にわたる地方への流れはミッシングリングである。今回、魅力ある一つの可能性が示された。実証について氏のこれからのご活躍を期待したい。
●公式HPhttp://www.thm.pref.miyagi.jp/special/special_h19/h19_2_ennin/outline_h19_2_ennin.html
・(入唐求法巡礼行記「コインの散歩道HP」)http://www1.u-netsurf.ne.jp/~sirakawa/C011.htm
◎kanjisinの「円仁関連記事」
http://d.hatena.ne.jp/kanjisin/searchdiary?word=%b1%df%bf%ce
◎慈覚大師と修験
・(大分の古代美術HP)http://www.e-obs.com/rekisi/kodai/sousetu/sousetu2-4.htm

円仁 唐代中国への旅 (講談社学術文庫)

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入唐求法巡礼行記 (1) (東洋文庫 (157))

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起請文の精神史-中世の神仏世界 (講談社選書メチエ)

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帰りは大沢にある小さな阿弥陀堂に参り

「永仁の碑」を見る。当地では珍しく額がある。
梵字バン(金剛界大日如来)と「永仁二年」(1294)が刻まれている。