『1Q84』─1Q84年 青豆と天吾の物語

「ここは見世物の世界

何から何までつくりもの

でも私を信じてくれたなら

すべてが本物になる」

“It's Only a Paper Moon”
(Words by Billy Rose and E.Y.Harburg Music by Harold Arlen)
「イッツ・オンリー・ア・ペーパー・ムーン
1932年の「ザ・グレート・マグー」(演劇作品)のために書かれた曲らしいですが
「小説の本質」を述べたような痺れる言葉を冒頭に掲げた
村上春樹の新作『1Q84

氏のエルサレム賞受賞記念講演でのスピーチ「高くて、固い壁があり、それにぶつかって壊れる卵があるとしたら、私は常に卵側に立つ」とイスラエルパレスチナ自治区ガザへの攻撃に触れて、軍事力によるやり方を批判した(2009年2月15日)言葉に胸をうたれた記憶が新しいが、
エルサレム賞スピーチ(47ニュースHP)
http://www.47news.jp/47topics/e/93925.php
asahi.com http://www.asahi.com/culture/update/0216/TKY200902160022.html
それで どのような小説なのだろうか?と読み始めた‥

BOOK 1
    高速道路の非常階段を降りていくと‥そこは
そう 新作は最初から春樹節全開でいい調子です!
ものすごい売れ行きのようなので、わざわざお薦めするまでもないですけど。
    シンフォニエッタ ヤナーチェック
バルトーク : 管弦楽のための協奏曲 / ヤナーチェク : シンフォニエッタ
今回は歴史(関係性)好きの「肉体こそが聖なる神殿」たる青豆(女性)さんの登場から始まる。 
そして“真実は細部に宿る”とばかりに
「青豆」を乗せた渋滞のタクシーの運転手の前方を見つめる様子は
「まるで舳先に立って不吉な潮目を読む老練な漁師のように」と
村上春樹さんの文は、イメージがさっと創られるのである。これが吉とでるか‥

時は1984年いや1Q84
仕置き人 青豆と小説家志望の予備校教師 天吾
お二人のインモラルな生活ぶりには少々辟易するが、幼少時の心の傷が根にある。 というべきか。しだいにその二人の「傷」の時間と場所が接近してくるところは見事。
そして、美少女ふかえり原作「空気さなぎ」が秘めたカルトの闇をリトル・ピープルが運んで来る。
音楽そして肉体・性を「執拗低音」とした村上春樹の世界は変わらない。好き嫌いはあるだろう。
「関係性としての歴史」が基調に加わったことは嬉しい
現代に浮かび上がる ふかえりの語る『平家物語』─壇ノ浦合戦が個人的には好きである。
http://www.saga-ed.jp/workshop/heike/heike/index.html(佐賀県教育c.HP)
 なかなか面白いと思う 作者の意図はどこにいくのか?
ダウランド:リュート集
(青豆のボスである「老婦人」の好きな「400年前の人々が聞いた」ダウランドの「ラクリメ」)


お楽しみははBOOK2へ

【データ】
・評“メランコリーの夜は明けた”(鴻巣友季子・朝日090607)
1984
(ウィキペディア)http://ja.wikipedia.org/wiki/1984%E5%B9%B4
もしかして 
1984年 (ハヤカワ文庫 NV 8)
・物語の背景─カルト宗教
(ウィキペディア)http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%88

なぜカルト宗教は生まれるのか

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